磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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死の内の生命-ヒロシマの生存者- Death in life

2008年09月05日 | 読書日記など
『死の内の生命-ヒロシマの生存者- Death in life』
   ロバート・J・リフトン(著)/湯浅信之、他(訳)/
     桝井迪夫(監修)/朝日新聞社1971年

この本は秋葉市長が若かりしころ怒っていた本です。それに対して訳が悪かったなどという人たちがいるが、訳だけの問題ではないだろうとボクは読み直して思いました。



臨床の現場では、観察する自分さえも、客観的にみて分析しなければならない……。

--この本は権威主義で切り刻んだにすぎない、まるで週刊誌の記事のようである……。

まず、この著者のスタンスから入っていくべきだろうが、一般読者の私である。

ABCCの批判などについても、積極的な事実を知ろうとはしないという。それでいて、心理を究明しようという姿勢をとっている。

権威主義の人たちは、権威に弱いのである……。それを利用して生きているから、そうなるのは当然のことだろうと思う。

ところが、この原爆という問題には『原爆神話』というものをつくりあげるほどの差別があり、非科学的であるという問題がそこにある。

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残留放射能が少なく評価されると被爆者は怒るのは、心理的な側面だけではなく、事実をねじまげる非科学的なアメリカ政府関連の人たちの異常で都合のいい論理を展開しているのである。

その社会的な基本、基盤を無視して心理的側面というのは、週刊誌の記者のようだとボクは思う。

心理的な分析に入るのではなく、主観で物事を思考していく……。

事実を否定し、その上に築いていけば、間違った答えが出されるのは当然のことだろう……。

こんな本を読んで、精神医学の権威がかいた素晴らしい書物と持ち上げる人がいるのが不思議なことだと思える……。

この本を非科学的であるという人がいても、ボクは否定できない。

心理を分析していくにしても、事実をつみあげて客観性をたかめていくのが正しい手順だろう。
ところが、この著者は心理から事実を発見していくという愚かな手法さえとっている。

「75日不毛説」も、こんな論理である。下「」引用。

「とくに七十五年という期限がどうして定められたのかは、全の謎となっている。この問題を調べたとき、数人の被爆者は、日本には「人の噂も七十五日」という格言があるから、それが転化して七十五年になったのであろうという説明をしてくれた。また、ある物理学者は、ある物質は核分裂による放射能を七十五年出し得るから、それから来たのだろうと説明をした。しかし、心理学的な立場からとくに注目されることは、それらの噂の源が「外から来た」「アメリカから出た」「学者から出た」「ある科学者、多分アメリカ人から生まれた」というぐあいに、外部説が多いことである。これは、アメリカが破壊の源であると考えれていたからであり、学者や科学者が加わったのは、噂に権威を与えるためであったと推定される。」

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この人の推論が科学とは思えないし、こんな結論が有用であるとも思えない。
権威主義である著者の心理の投影といってもいいかもしれない……。

『原爆神話』というのも、他の書物とは違う意味で使われている。
--ここでいうのは原爆神話ではなく、原爆迷信といったものだろうと思う。
--嘔吐したからよかったなどという。迷信であって、神的な権威などはないとボクは思う。


そしてアメリカは偉大であるとしたいのだろう。下「」引用。

「被爆直後に流れた噂の一つに、「アメリカ人はドイツ人の飛行士を使って原爆を落とした。原爆も、もともとはドイツで開発されニューヨークに投下されるべきはずのものであった」というのがあるが、この噂の発生を促した心理的過程は、このような偉大な武器を敵国ではなく、なんとか自己に最も近い、政治的にも文化的にも軍事的にも友好国であったドイツと結びつけて理解したいということであろう。」

ドイツだけではないが、ヨーロッパからのナチス迫害によるユダヤ人科学者の力が大きかったのは事実。
天才フェルミなくして、原爆の早期開発はムリだったろう……。
--後に、ソ連に宇宙開発に遅れたとき、ナチス・ドイツの科学者の手を借りたことも有名。

大田洋子の文章の引用が多かった。下「」引用。

「大田女史のように、もっと強い言葉で、「興味ないですね。あれはなんの象徴なんかしてませんもの。ただもう汚らしいだけですよ」という人もいるのだ。-略-(大田女史の言葉によれば)「マンネリズム」に堕したことをいっているのである。」

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大田洋子の個人的な意見を否定することはできないが、平和につながる考えではないと思う。保存をもとめた方が、より平和につながる考えだったと思う。

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永井隆のことも書かれてありました。下「」引用。

「彼らはわかっているのか? 原爆が生き残った者たちの心、良心、精神、に及ぼした影響を、彼らは調べてみたことがあるのか? ひとつの共同体としての機能にたち戻ろうともがいている精神的破産者たちの社会があることを、彼らは少しでも知っているのだろうか?-略-荒野となった長崎を訪れる人が見落とすのは、この精神的な破壊であり、これは全く治癒不可能なものなのである。」
 この訴えは永井隆博士の『原爆戦場心理』の終りの部分から引用したものである。この書物に盛られた抗議には、広範な感情の分裂を呼び起す要素がふくまれている。」

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永井隆の時代よりも、今は精神的破産者たちが増えている時代であると私は思っている。

事実を隠蔽して『原爆神話』をつくりあげたアメリカ。
--その巨大な野蛮な力の下では、誰でも無力であり、権威などというのも、玩具でしかなく、事実を歪めてしもうものであると思った……。

これは、チェルノブイリ事故のときにも同様のことを感じた……。

フラナガン神父は、原爆でいくら慈善をしても、その原爆投下したことを忘れては偽善になるという表現は正しいと思う……。

ましてや、『原爆神話』など、神の話ではない……。神的権威を原爆に与えたカルト教団のようなアメリカ政府という意味である……。

カルトもそうであるが、現実、事実と信者を切り離す……。

そして、想念でちがう事実をつくりあげる……。

それにしても、他国にきて、これほど雑多なことを書き上げたというのは驚嘆ものであるが……。

お膳立てがあったら、当然できることだろう……。

この本を読んで、広島の被爆者たちを愛する人が怒ったとしても、当然のこととしかボクには思えない……。

むしろ、怒らなかったら、精神的に不健康だろうとボクは思う……。

それにしても、訳が悪いというのなら、どうして改訂版を権威ある人が出版しないのだろうか?

今では、心理療法士がさまざま手法をもちいて、心理を分析している……。









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