「話を聞かせてください」。普段なら真っ先に口から出る言葉を言えなかった。土砂の中から遺体が見つかり、その家族の男性を前にした時だ。救助に当たる大勢の消防隊員たちの傍らで、私は無力感を覚えた。話をしてくれたとしても、悲嘆に暮れる遺族をさらに苦しめることにならないか。新聞記者になって4年目、初めて経験した大規模な災害現場で悩み続けた。
元日に発生した能登半島地震。約3週間後に被災地に入り、犠牲者の遺族や安否不明者の家族・知人らを捜し歩いた。1月22日は石川県輪島市内で安否不明になっていた60代夫婦の捜索活動があり、消防隊員の後を追って夫婦の自宅前に向かった。
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