連載

記者の目

最前線の記者がそれぞれの取材テーマを論じます。1976年にスタートした毎日新聞を代表するコーナー。

連載一覧

記者の目

袴田事件 釈放10年 「死刑の恐怖」続く、非人道性=荒木涼子(エコノミスト編集部・元静岡支局)

大半を過ごす、日光が暖かく注ぐお気に入りソファで、姉の秀子さん(左)にひげをそってもらう袴田巌さん=浜松市中区(現中央区)で2023年12月28日、荒木涼子撮影
大半を過ごす、日光が暖かく注ぐお気に入りソファで、姉の秀子さん(左)にひげをそってもらう袴田巌さん=浜松市中区(現中央区)で2023年12月28日、荒木涼子撮影

 静岡市(旧静岡県清水市)で起きた強盗殺人事件で、1980年に死刑が確定した袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)が間もなく結審する。私は静岡支局に2012年に配属されてから事件を担当し、17年に異動以降も浜松市に住む姉の秀子さん(91)や袴田さんと交流を重ねてきた。3月には袴田さんが47年ぶりに釈放されて10年となったが、ここ数年、高齢のきょうだいと再会する度、時の流れの重みを感じざるを得ない。

 66年の逮捕から死刑確定まで14年、再審開始決定と釈放まで33年。そして実際の再審が始まるまで9年。現在は社会の中で日々を送るも、なお「確定死刑囚」として死と隣り合わせの生活を強いられているむごさに涙が出る。再審では検察側が有罪立証を続け、袴田さんは超長期の「死への恐怖」から今も、精神に癒えない傷を抱える。死刑制度の是非は置いても、制度が持つ、いつ執行されるか分からない非人道的な歳月を、私たちは…

この記事は有料記事です。

残り1493文字(全文1895文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月