AWSジャパン、生成AI最新情報を発表--開発者体験を一新する「Amazon Q Developer」など

寺島菜央 (編集部)

2024-05-17 15:30

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は5月16日、Amazon Web Services(AWS)が提供する生成AIアシスタント「Amazon Q」と生成AIアプリケーションの構築基盤「Amazon Bedrock」に関するアップデート情報を説明した。同日に行われた記者説明会では、AWSジャパン サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長の小林正人氏がデモンストレーションを交えながら説明した。

AWSジャパン 小林正人氏
AWSジャパン 小林正人氏

 小林氏は冒頭、生成AIはモデルに注目が集まりがちだが、「実際に大切なのは、ユーザーが直接触るアプリケーションやシステムだ」とし、それぞれのアプリケーションやシステムに適した生成AIを組み込むことが、ユーザーに対してより高い価値を提供できると説明した。

AWSが提供する製品群
AWSが提供する製品群

 Amazon Qにおけるアップデートは、「Amazon Q Business」「Amazon Q in QuickSight」「Amazon Q Developer」「Amazon Q Data Integration in AWS Glue」の一般利用、「Amazon Q Apps」のプレビュー提供の開始だ。

 Amazon Q Businessは、組織のさまざまなドキュメントやシステム、アプリケーションなどを通して蓄積されたデータや情報をAIが横断的に分析し、従業員のタスクを簡略化する生成AIアシスタント。Amazon Qと連携する40以上のビジネスツールをデータソースとして接続でき、各ユーザーに最適化された正確な応答が期待できるという。2種類のサブスクリプションを用意しており、「Amazon Q Business Lite」は月額3ドル、「Amazon Q Business Pro」は月額20ドルで利用できる。現時点では、米国のバージニア北部とオレゴンのリージョンで一般利用を開始している。

 Amazon Q Business Proの一部として、Amazon Appsのプレビュー版が提供された。これは、自然言語による説明文、もしくはAmazon Q Businessによって問題解決に至った会話から、必要なタスクを実行できるアプリケーションをコーディング不要で作成できる。作成したアプリはライブラリーに保管でき、組織内で容易に共有できる。

 Amazon Q in QuickSightは、統合ビジネスインテリジェンス(BI)サービス「Amazon QuickSight」にAmazon Qを連携したサービス。これにより、生成BIアシスタントを利用することができ、自然言語を使用してBIダッシュボードを数分で作成できる。また、AIを活用してダッシュボードからエグゼクティブサマリーの生成や、自然言語による指示で重要なインサイト(洞察)の抽出ができる。現時点ではバージニア北部、オレゴン、アイルランドのリージョンで一般利用を開始している。

 開発者向けのAmazon Q Developerは、ソフトウェア開発に必要なベストプラクティスに関する調査やドキュメントの確認、コードのテスト、アプリのアップグレード、デバッグ、セキュリティ確認と修正など、ライフサイクル全体にわたる煩雑な繰り返し作業を削減する生成AIアシスタント。開発者の繰り返し作業を削減することで、より良い顧客体験(CX)を提供できる作業に開発者が時間を費やせるようになるとしている。

  Amazon Q Developerに搭載される機能は、「コーディングレコメンド機能」「Amazon Q Developer Agents」「セキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性スキャンと修正機能」「AWS環境の最適化」など。料金体系は、月額19ドルで利用できる「Amazon Q Developer Pro Tier」と、月間利用回数に制限がある無料版の「Amazon Q Developer Free Tier」の2種類を用意している。

Amazon Q Developerに搭載されている機能
Amazon Q Developerに搭載されている機能

 Amazon Q Data Integration in AWS Glueでは、データ統合サービスの「AWS Glue」のデータ統合パイプラインを、自然言語を利用して容易に構築できるようになった。Amazon Qとの会話を通じて、ジョブの作成やトラブルシュート、データ統合に関する知見を得ることができるという。

 Amazon Bedrockにおけるアップデートでは、「Knowledge bases for Amazon Bedrock」「Agents for Amazon Bedrock」「Guardrails for Amazon Bedrock」が東京リージョンに対応する。

 Knowledge bases for Amazon Bedrockは、Amazon Bedrockの基盤モデルを社内データソースに接続し、検索拡張生成(RAG)機能を利用できる。組織内データの蓄積から問い合わせまでフルマネージドで実現し、RAGによる生成AI応答のカスタマイズを容易にする。

 取り込みたい組織内データを数値によるベクトル表現であるエンベディング形式に変換し、ベクトルデータベース(DB)に保管。問い合わせでは、ユーザーからのリクエストを埋め込み形式に変換し、ベクトルDBで検索。情報の取得を行う。

 Agents for Amazon Bedrockでは、組織内のさまざまなシステムやデータソースを活用し、従業員のタスクを生成AIが実行する。具体的には、基盤モデルを利用して、従業員からの作業指示を生成AIが分解。APIを介した社内システムへのアクセスや、データソースからの情報に基づいた回答を検索することでユーザーの要求に応える。現在は、Anthropicの「Claude 3」や「Amazon Titan Text Premier」などから用途に最適なモデルを選べるという。

 Guardrails for Amazon Bedrockは、組織のユースケースと責任あるAI利用ポリシーに基づき、生成AIアプリケーションに追加のセーフティー機能を追加できる。同サービスでは、各モデルが持つ安全機能に依存せず、不適切なトピックや単語の拒否や暴力、プロンプト攻撃、機密情報や個人情報を含むユーザー入力・モデル回答などのフィルタリングを追加で適用できる。

Guardrails for Amazon Bedrockのデモ画面。プロンプトのフィルター強度を選べる
Guardrails for Amazon Bedrockのデモ画面。プロンプトのフィルター強度を選べる

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