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Webサイトの運営・管理は誰の仕事? IT部門の「社内下請け化」を解消するカギは?

IT部門の大きな負担になっている業務の1つが「Webサイトの運営」だ。本来はサイトの監督責任がある管理部門や事業部門といったユーザー部門に任せたいところだが、ITの知識が求められたり、セキュリティー対策が必要となるため簡単には業務を移管できない。このような状況に解決策を提示するのが、野村インベスター・リレーションズの「ShareWith群(シェアウィズぐん)」だ。実際のIT部門の課題や解決方法について、同社のキーパーソンに聞いた。

IT部門が「社内下請け」と化している、サイト運営の弊害

野村インベスター・リレーションズ株式会社 ShareWith事業部長 兼 DXイニシアチブ リーダー 中村 貴彦氏
野村インベスター・リレーションズ株式会社
ShareWith事業部長 兼 DXイニシアチブ リーダー
中村 貴彦

企業の情報発信やマーケティング活動におけるWebサイトの重要性がますます高まっている。人々は、PCやスマートデバイスを使って情報を能動的に入手してから、商品・サービスの購買意志を決定する。コンシューマ向けの世界はもちろん、企業間ビジネスの世界でもこれは同じだ。Webサイトの優劣が企業のイメージや評価、業績に影響を及ぼすようになっているのは言うまでもない。

しかし、Webサイトの運営では多くの企業が課題を抱えている。代表的なのがIT部門の社内下請け化だ。

顧客をはじめとするステークホルダーとの接点にWebサイトを活用したいのは、広報、経営企画、人事などの管理部門、または商品やサービスを提供する事業部門である。一方、Webサイトの基盤の構築・運用に必要な知識や技術を有しているのはIT部門だ。そのため、企業がWebサイトを立ち上げる際は、サーバーなどのインフラの調達・構築、セキュリティー対策の実装などをIT部門が担うケースが多くある。

「また、各部門や広告代理店が各々発注先を選定するため、Web制作会社、CMSツールがばらばらになることが当たり前になっています。中にはサーバーなどのインフラも制作会社にお任せしているケースまであります。しかし、残念ながらほとんどのWeb制作会社はセキュリティーやインフラに強くない。そのため、IT部門が専門家として間に入って社内外の調整の役回りになり、その延長でサイト公開後の日常の更新作業を引き受けている企業がいまだに多い状況です」。そう話すのは、野村インベスター・リレーションズ(以下、野村IR)の中村 貴彦氏だ。

企業が保有するWebサイトがどんどん増える中、異なる運用体制を把握して、それぞれの現場を適切にフォローしなければならない。このことがIT部門の大きな負担になっている。

DXを担う多忙なIT部門にとって、これは悩ましい問題である。この状況が続けば、経営戦略において重要なDXの実現に向けたリソースを確保することも困難になる。組織が“稼ぐ力”を高める上で、Webサイト運営の社内下請け化を解消することは、小さいようで大きい、見過ごせないポイントなのである。

独自の『サイト群管理』で、一気にWebガバナンスを実現する

そこで野村IRは、こうしたIT部門の課題を解消するソリューションを提供している。それがWebサイト群統合クラウドプラットフォーム「ShareWith群」である(図1)。

野村インベスター・リレーションズ株式会社 ShareWith事業部 サービス開発グループ リーダー 中村 健司氏
野村インベスター・リレーションズ株式会社
ShareWith事業部 サービス開発グループ リーダー
中村 健司

野村IRは、「ShareWith」という、ユーザー部門には使いやすさ、IT部門にはセキュリティーが高く評価される上場企業導入数No.1※のクラウドCMSサービスを提供している。このサービスを提供する中、ここ数年はIT部門からの問い合わせが増加傾向にあったという。ShareWith群は、複数サイトの管理に苦慮しているIT部門の苦しみに気付き、IT部門、ユーザー部門、それぞれの課題をまとめて解決するために開発された。


図1 「ShareWith 群」が解決する、IT担当者の課題

図1 「ShareWith 群」が解決する、IT担当者の課題

「ShareWith群は企業・組織が保有する多種多様なWebサイトをまとめて統合管理できるソリューションサービスです。『サイト群管理』という独自のアプローチに基づき、既存WebサイトのCMSやサーバーインフラをスピーディに統合することが可能です」と同社の中村 健司氏は説明する。

具体的には、顧客が保有するWebサイトを、内容や運営形態に応じて「コーポレート(本社)サイト」「グループ各社・部門サイト」「各部門サービスサイト」「LP・プロモーションサイト」の4つの群に分類する。各群には、野村IRのベストプラクティスに基づく手法・プロセスを定型化した独自の群マネジメント(管理手法)が提供されており、導入企業は既存のWebサイトを4つの「群」に分類するだけで、スムーズに移設を進めることができるという(図2)。


それまで個別のインフラ、ツールを使って運営されてきた多くのWebサイトを統合することで、サイト運営体制のシンプル化、およびインフラの運用負荷軽減を図ることができる。なお、それまで関わってきた外部のWeb制作会社や代理店などには、そのまま引き続きShareWithを使ってもらうことも可能だ。

図2 独自のサイトマネジメント手法「サイト群管理」

複数部門が運営するコーポレートサイトから、単一部門のランディングベージやプロモーションサイトまで、サイトの運営形態に応じて4群に類型化。これに基づくことで、効率的なShereWithへの移設、運営が可能になる

図2 独自のサイトマネジメント手法「サイト群管理」

※株式会社DataSign「教えてURL 上場企業CMS調査レポート2023年8月度」から、サーバーインストール型CMSを除いたクラウド型CMSの導入企業数。クラウド型CMSとは、SaaS(CMSとサーバーを一体としたサービス形態)で提供されているものを指し、サーバーのみ利用、部分的利用は含まない。SaaSの判定は、ドメインシグナルの検出、およびDNSのCNAMEレコード参照による

CMSを触ったことがない人も「これなら使える」

また、ShereWith群のベースになるShareWithは、サイト運用業務をIT部門からユーザー部門へ移行する「業務リプレイスツール」としての特徴も備えている。その枢軸となるのが、ITに詳しくない人でも使いこなせる、分かりやすいユーザーインタフェースである。

ShareWithはマニュアルを見ることなく、Webサイトを直接編集する感覚で操作できる。サイトに配置するテキストボックスや見出しなどの要素が「パーツ」として用意されており、それらを呼び出して保存するするだけでページを作成できる。しかも、ページが崩れないようにレイアウトが固定されているため、ユーザー部門は失敗を怖がることなく作業することができる。

サイト全体をCMSで管理し、ページ同士が自動的にリンクでつながるシステムアーキテクチャも特徴だ。ページの追加や移動を社内で自由に行えるため、サイト運営の機動性を高められる。

「お客様にデモをご覧いただくと、まだCMSを触ったことがない人や、ほかのCMSを使っていた人から『これなら使える!』と、驚きの声をいただきます。なぜか? ITの知識がないユーザー部門の方たちに明確に絞って、作っているからです。一見、当たり前のことに聞こえると思いますが、その考えを徹底し続けているCMSは世の中にそれほど多くない」と中村 貴彦氏は話す。

どんなに高機能でも、専門性の高いツールはユーザー部門に受け入れてもらえない。ShareWithであれば、サイト運営業務の現場移管に向けたハードルを難なくクリアできるだろう。ユーザー部門にとっても、サイト更新作業をユーザー部門自ら行えるようになることで、更新スピ―ドの向上、指示・調整業務の削減といったメリットが期待できる。

金融機関の要件も満たすセキュリティー機能を標準提供

野村インベスター・リレーションズ株式会社 ShareWith事業部 プロダクト開発グループ リーダー 田尻 哲次氏
野村インベスター・リレーションズ株式会社
ShareWith事業部 プロダクト開発グループ リーダー
田尻 哲次

加えて高度なセキュリティー機能も強みだ。DDoS攻撃対策となるCDNや、WAF、IPS/IDS、Webサイト改ざん検知などの多層防御が標準で提供されており、Webサイトをサイバー攻撃から守ることが可能だ。

「IT部門には、全社のシステムやネットワークのセキュリティー対策を実施し、サイバー攻撃からビジネス活動を守る責任があります。その範囲には当然、コーポレートサイトやキャンペーンサイトも含まれますが、この責任を放棄できないため、Webサイトの運営業務から手離れできないIT部門も多いと思います。ShereWithならこうした問題の構造を解決できます」と同社の田尻 哲次氏は述べる。

金融機関をはじめ、Webサイトに高度な安全性を求める大手企業に多く採用されていることは、ShareWithのセキュリティー面の優位性を裏付けるエピソードといえる。加えて、BCP対策となるデータセンターの分散配置や、24時間365日の有人監視などの体制も整えている。一連のインフラおよびセキュリティー機能のメンテナンスは野村IRが担っているため、運用・保守もIT部門が手離れできる。


ユーザー部門のサポートごと、IT部門から引き取る

「また、サイト運営業務をスムーズに現場に移管できるように、ユーザー部門へのサポート対応も当社が積極的に引き受けます。専門のサポートデスクが、Webサイトの更新時などに発生しがちな悩みに対して電話・メールでサポートするほか、FAQサイトも充実し、いつでもお悩み事を解決できるようにしています」と田尻 哲次氏は語る。

IT部門がShareWith群の導入に向けて社内で上申・審査する際に必要な各種資料も事前提供する。加えて、ユーザー部門への説明は野村IRが直接担当し、懸念点にはクイックリーに返す。このように、単にCMSツールを提供するのみならず、IT部門の負担軽減に向けた人的サポートも積極的に提供している点は、導入企業のIT部門にとってうれしい点といえる。

こうした機能や支援が評価され、ShareWith群は2023年7月のサービス開始以来、多くの企業・組織に採用されている。

【Case 1】全国各都道府県に支店を持つ企業

従来は、Webガバナンスの観点から本部が一括して各支店のWebサイトを運営してきた。しかし、各支店の要請に応じて本部がWebサイトを更新するのは多くの手間と時間がかかる。「そこで、支店ごとに情報が異なり、更新が多いキャンぺーン系のページは運用を支店に移管し、すべての支店で情報を統一させる必要があるページは本部が共通管理する仕組みを提案しました。これによってIT部門の業務量の大幅な削減が見込めます」と中村 健司氏は紹介する。

各支店が自律的にWebプロモーションを展開できるようにすることで、一層の顧客エンゲージメント強化、販売促進につなげていく予定だ。

【Case 2】某化学メーカー

このメーカーは、グループ会社のサイトを含め計10サイトをShareWith群に統合した。それまではオープンソースのCMSを利用していたが、セキュリティーアップデートの煩雑な作業がIT部門の負担になっていた。その点ShareWithではセキュリティー機能が標準で提供される上、更新などのメンテナンスも野村IRに任せられる。業務負荷が大幅に軽減できると考えたという。

また、業務移管に当たって重要になるグループ会社のWeb担当者への説明会も野村IRの支援を受けながら進めた。今後、段階的にコンテンツ更新作業の現場移管を行っていく予定だが、グループ会社側はShareWithの使いやすさを高く評価しているとのこと。近い将来、業務移管が進んでいくだろう。

Webサイトの本来の力を引き出し、企業の成長力を引き出したい

「ShareWith群はあくまで1つのプロダクトに過ぎません。私たちは、お客様企業のWebサイト運営を本来あるべき場所に戻すため、IT部門が引き取ってきた業務の現場移管を全力でお手伝いしたいと考えています。それがShareWith群を通じて提供したいサービスです」と中村 貴彦氏は強調する。

ソリューションの機能も継続的に強化する。Webサイトのアクセシビリティ対策はその一例だ。2024年4月に施行される「改正障害者差別解消法」では合理的配慮の提供が義務化される。そこで、CMS基盤にアクセシビリティ要件に適合する対策を実装。「ShareWithを導入するだけで、AA準拠のサイトへのスピーディ、かつコストと手間をかけずにリニューアルが可能です」と中村 健司氏は言う。

またShereWith群については、より柔軟で機動的なサイト運用を実現するための機能拡張も予定しており、さらに包括的なWebサイトの管理を実現できるようになるだろう。

企業のWebサイトに求められる要件は多岐にわたる。限られたリソースで、増え続けるWebサイトを管理・運営していく上では、それを支える仕組みや体制をアップデートすることが肝心だ。IT部門とユーザー部門が、適切に役割を分担することで、効果的なWebサイトの構築・運営を実現する。野村IRのShereWith群は、日本企業のビジネス成長の起爆剤になる可能性を秘めている。

集合写真