文化
J-POPなぜ聞き取りにくい? 信州大教授、西宮で講演
CDショップのJ-POPコーナー。英語と日本語を違和感なく融合させる精神は、ジャケットや売り場にも反映されている=神戸・三宮のタワーレコード神戸店 |
最近の歌の発声について話す沢木・信州大教授=西宮市池開町、武庫川女子大 |
若者向けの歌は、何を歌っているのやらよく分からない。そう感じている人も多いのではないだろうか? それは、かつての歌謡曲などになかった独特の発声があるからだという。J-POP(ジェイ・ポップ)の発音やリズムについて、信州大人文学部(長野県松本市)の沢木幹(もと)栄(えい)教授(方言学)が、このほど西宮市の武庫川女子大で講演した。(武藤邦生)
聞き取りにくい歌い方の“代表格”とされてきたサザンオールスターズの桑田佳祐。沢木教授によると、その理由の一つは、ア段の母音を「エ」に近い発音で歌うことだという。「姿」が「すぎェた」、「身体(からだ)」が「きェらだ」のように聞こえるのだ。
ウ段に特徴があるのは小柳ゆき。「う」は英語の「u」と異なり唇をあまり丸めないが、彼女をはじめ最近の歌手には、強く丸めて発音する傾向が見られるという。そして「ら、り、る…」は、英語の「La・Li・Lu…」に近い。
これらの新しい歌い方について、沢木教授は講演で「日本人がイメージする英語の発音に近づけようとしているようだ」と分析。「一九七〇年代後半から歌詞に英語が含まれることが増えた。日本語も英語っぽく発音することで、二つの言語が混在する違和感を減らそうとしているのではないか」と推測した。
そして、リズムにも変化が見られるという。
小田和正の「まっ白」という曲では、歌詞をメロディーの拍に合わせ、「きっと」を「きと」、「ページ」を「ペジ」のように歌っている。「答えを遠くに置いてしまうんだ」は「特に置いてしまうんだ」と聞こえる。
「いまだかつて、まずなかった歌い方」と沢木教授も舌を巻くのは、JUDY AND MARYの「散歩道」だ。
「仲良くなれないの」の「く」を無声化。「ドッカーン」の「ド」は軽く発音し「シンコペーションを強調している」。「いい加減に歌っているようで、実は大変な計算がある」と見た。
こうした歌い方は、実は歌謡曲時代にさかのぼる。山口百恵も「ロックンロール・ウィドウ」では、「う」を発音するとき唇を強く丸めていた。
サザンも小田和正も山口百恵も、歌い方は常に同じではなく、曲によって変化をつけているという。「聞き取りにくい歌い方」も、アーティストならではの「表現」なのだろう。
(12/20 12:20)
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