感染症学雑誌
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原著
市中で発症したCOVID-19 肺炎10 症例の特徴
寺嶋 毅小山 薫島田 嵩堤 昭宏黒田 葵岩見 枝里中島 隆裕松崎 達
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2020 年 94 巻 4 号 p. 507-513

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抄録

感染経路が不明なcoronavirus disease 2019(COVID-19:SARS-CoV-2 感染症)の症例が日本の各地で報告されつつある.市中で,咽頭痛や咳などの上気道症状,発熱などを呈する症例に遭遇した場合に,COVID-19 の可能性をどの程度考慮するかは難しい.市中で発症しSARS-CoV-2 のPCR 検査を施行し陽性が確認されたCOVID-19 肺炎10 症例について,経過,症状,検査所見,画像所見を検討した.38℃以上の発熱90%,鼻汁10%,咽頭痛40%,咳80%,痰50%,息切れ60%,倦怠感70%,消化器症状を30% に認めた.家族に体調不良,発熱を認めたのは50% であった.症状出現から診断まで5~12 日,受診回数1~3 回であった.聴診所見は1 症例のみcoarse crackles を認め,SpO2 は8 割で95% 以上,2 割で80% であった.いずれの症例も白血球数増多はなく,リンパ球数減少(1,000/μL 未満)を60% に認めた.CRP は70% で5mg/dL 以下の軽度上昇にとどまり,50% でD-dimer の軽微な上昇を認めた.CT では全ての症例で,両側,多発性のスリガラス様陰影を認めた.末梢の胸膜直下に優位な分布,右下葉にも病変が存在する割合は90% であった.①同居者に体調不良者がいる,②38℃以上の発熱,③リンパ球数の減少,④特徴的なCT 所見,⑤CT で肺炎を認めるが白血球数や好中球数の増多を認めない,の数項目があてはまる場合,市中で遭遇する感染症においてCOVID-19 肺炎の可能性が高いと考えられた.

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© 2020 一般社団法人 日本感染症学会
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