コミックナタリー PowerPush - 吉河美希「山田くんと7人の魔女」

男子も女子も、入り乱れてキス三昧!「ヤンメガ」の吉河美希が放つ、型破りな学園ラブコメ

問題児の山田と優等生のうららの体が、キスしたことで入れ替わってしまった!──少年誌としては前代未聞のキスシーンの嵐で話題を呼んでいる「山田くんと7人の魔女」は、初連載作「ヤンキー君とメガネちゃん」で一気に週刊少年マガジン(講談社)の看板作家に躍り出た吉河美希が放つ意欲作だ。

コミックナタリーでは、単行本4巻の発売に合わせて吉河の仕事場を直撃。「ヤンメガ」にまつわる秘話から学生時代のエピソード、学園ものへのこだわりなどを訊き、吉河のルーツを辿りながら「山田くん」の魅力に迫る。ユニークなペットやド迫力の剥製など、一風変わった仕事場の写真も併せてお楽しみあれ。

取材・文/岸野恵加 撮影/井上潤哉

等身大の高校生を描くことを大事にしていた「ヤンメガ」

──吉河先生のインタビューが、週刊少年マガジン(講談社)や単行本以外の媒体に載るのはこれが初めてだそうで。前作「ヤンキー君とメガネちゃん」(以下「ヤンメガ」)の根強いファンの方も多いと思いますので、「山田くんと7人の魔女」の話題に入る前に、少し「ヤンメガ」を振り返っていただけますか。

吉河美希の仕事場にて。

「ヤンメガ」は初めての連載だったので、連載ってこういう感じなのかなっていうのをひたすらずっと手探りしていた感じでした。毎週20ページ描くっていうことがどういうことなのか、経験したことがないからわからないし。例えるなら、しがない村出身の兵士がいきなりすごい武将たちがいるマガジンって戦場に戦いを挑んで、どうやってのしあがれって言うんだよ! って話です。毎週泣きそうでしたね……。

──具体的に言うとどんな作業がつらかったんですか?

作画はもちろん肉体的につらいんですが、ネームで脳みそが死にそうでした。1話完結のスタイルを取っていたので、ネタの消耗がものすごい激しいんですよ。毎日5時間くらい、担当と打ち合わせしてた時期もありましたし、1週間で8本ネームを切った事もありました。

──そんな状態で、4年7カ月も連載が続いたんですね。単行本にして23巻。これほどまで続くと思ってました?

「ヤンキー君とメガネちゃん」23巻

始まった頃は本当にいっぱいいっぱいだったので、そこまで考えられてなかったんですけど、「ヤンメガ」の時間は、現実の時間とシンクロさせて進めてたんですね。作中に出てくる夏休みとかバレンタインとか行事のタイミングを、マガジンが出る時期と合わせて。それをやってくうちに、「この作品では、卒業までの高校3年間を描けばいいかな」っていうのが見えてきたんです。

──なるほど。でも3年間を描くと言っても、結果から見ると連載期間の方が1年7カ月も長いです。2010年にはTVドラマ化もされたし、編集部から引き延ばして、っていう要望があったんでしょうか。

そういうわけではないんですけど、体育祭とか受験とか、少し長くなるエピソードがあると、現実の時間と厳密には合わなくなってきて延びてしまったんですね。本当は3月に卒業式で綺麗に終わりたかったんだけど、大人の事情で最終回が5月になっちゃったので、最後の2話はボーナストラック的に大学を卒業した後の品川たちのお話にしました。

──花の正体が何なのか、結局明かされないままに終わったので、読者から不満の声もあったんじゃないですか?

覚悟はしてました。ずーっと考えてたんですけど、正体がわかってしまった時点で花は魅力がなくなるなと思ったんです。仮に品川が花の正体を探ろうとしたところで、高校生にできることは限られている。大人がやるようなことを彼らがやってしまうのは、ちょっと遠くへ行ってしまう気がして違うな、と思ったんです。作家のわがままですが、わかってくれる人はわかってくれるかなと。

──あくまで「ヤンメガ」は高校生の話、というラインを守りたかったんですね。

そうです。花の正体に深く踏み込もうとすると、学校の話ではなくなってしまうので。

──でも、花の正体は設定としてはしっかり作ってあるんですよね?

吉河美希の仕事机。壁に貼られた紙の中には、ドラマ版「ヤンメガ」で足立を演じた仲里依紗によるイラストも。

いちおう(笑)。

──(笑)。読者の間では「親が極道なんじゃないか?」とかいろんな意見があったみたいですけど、わからないからいろいろ想像しちゃいますよね。もしかしたら魔界に通じてるのかな、とか。

あははは。そうなのかもしれない、としておきましょう(笑)。とにかくミステリアスな部分を残しておきたかったんです。そこが花っていうキャラクターの魅力だと思うし、「女の子ってよくわからん」っていうのは大事かなって。

──それは品川(=主人公)の視点で読者に読んでほしいってことですね。

はい。等身大の高校生を描くことを大事にしてました。

あらすじ

進学校である朱雀高校一の問題児・山田は今日も先生に怒られて超不機嫌。そのうえ、優等生の白石うららと一緒に階段から落っこちて、死んだ!
と思ったら白石と体が入れ替わっていた!! 相性サイアクな2人の運命が、不思議な力をきっかけに結びつく!!

キスするとナニかが起こるスクール・ラブ・コメディ開幕!!

最新5巻は2013年2月15日より発売中。また講談社のサイト・コミックプラスでは、スマートフォン&タブレットでも読める第1話が、全ページ公開されている。

吉河美希(よしかわみき)

プロフィール写真

2003年マガジンSPECIAL(講談社)にて「GLORY DAYS」でデビュー。以降、真島ヒロのアシスタントを経て、2005年に少年マガジンワンダー(講談社)に「ヤンキー君とメガネちゃん」を掲載。読み切りや短期連載での掲載を経たのち、翌年、週刊少年マガジン(講談社)にて正式連載が開始した。不良少年とクラス委員長の元不良少女が漫才のような掛け合いを繰り広げるコメディは人気を博し、2010年にドラマ化。2011年に完結した後、2012年2月から「山田くんと7人の魔女」の連載を開始した。


2013年2月18日更新