年報政治学
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《公募論文》
権威主義体制下の選挙とその帰結
―抗議運動を抑制する選挙結果の実証分析
門屋 寿
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2022 年 73 巻 1 号 p. 1_308-1_331

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抄録

 権威主義体制下において、選挙が時の政権を揺るがす抗議運動を引き起こすか否かは、いかなる要因に決定づけられるのか。この問いを解明することを目的として、これまで多くの研究が関心を向けてきた選挙不正ではなく、選挙結果そのもの、具体的には与野党の得票率差に着目した。得票率差は、野党やその支持者の持つ、抗議運動成功についての主観確率を左右すると考えられるためである。開票の結果、政権与党との間に歴然とした力の差、すなわち支持、動員力や組織力の差があると判明すれば、野党やその支持者は抗議運動の成功確率が低いと判断し、抗議運動を差し控えると予想される。この予想のとおり、1946~2010年までに権威主義体制下で実施された国政選挙を対象とした計量分析の結果から、選挙不正の程度を統制してもなお、得票率差の拡大が抗議運動の発生を抑える効果を持つことが明らかになった。そして、この得票率差が抗議運動の発生に及ぼす効果は、代替的な選挙不正変数を用いた分析、代替的な抗議運動変数を用いた分析や選挙管理機関の独立性で条件づけた分析を通じて、頑健であることが確かめられた。

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