本・書評
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今週の本棚・著者に聞く
山口由美子さん 『再生 西鉄バスジャック事件からの編み直しの物語』
2024/5/4 02:01 842文字◆山口由美子(やまぐち・ゆみこ)さん (岩波書店・2200円) ◇加害者の明日を思う被害者 あれから24年になる。17歳の少年が大型連休中に高速バスを15時間半乗っ取り、乗客に切りつけて1人を殺害した事件。被害者の一人で佐賀市に住む山口由美子さんが事件と、その後の長い時間をつづった。「いろいろな出
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今週の本棚
池澤夏樹・評 『山よりほかに友はなし マヌス監獄を生きたあるクルド難民の物語』=ベフルーズ・ブチャーニー著…
2024/5/4 02:01 1940文字◆『山よりほかに友はなし マヌス監獄を生きたあるクルド難民の物語』=ベフルーズ・ブチャーニー著、オミド・トフィギアン英訳、一谷智子、友永雄吾監修・監訳 (明石書店・3300円) ◇詩のための言葉で書かれた告発の書 うっかりすると副題のとおり「難民の物語」として読んでしまうかもしれない。 その線に沿
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今週の本棚
『現代コリア、乱気流下の変容 2008-2023』=A・V・トルクノフ、G・D・トロラヤ…
2024/5/4 02:01 544文字◇『現代コリア、乱気流下の変容 2008-2023』=A・V・トルクノフ、G・D・トロラヤ、I・V・ディヤチコフ著、下斗米伸夫・監訳 (作品社・2970円) トルクノフらロシアの学者が、朝鮮半島の最新の情勢を展望した。南北の政権の内情を鋭く分析、ワシントン、北京、モスクワ…と複雑に絡み合う力学を解
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今週の本棚・話題の本
『むかし話』=吉村和真
2024/5/4 02:01 865文字『男一匹ガキ大将』で少年誌に番長ものを流行(はや)らせ、『俺の空』で青年男性を虜(とりこ)にし、『サラリーマン金太郎』で幅広い層を取り込むなど、マンガ史にその名を刻む本宮ひろ志。近年では伊能忠敬や高橋是清といった日本史の偉人列伝にも注力していたが、近刊を読んで「そうきたか」と、うならされた。 タイ
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今週の本棚
『翻訳に生きて死んで 日本文学翻訳家の波乱万丈ライフ』=クォン・ナミ著、藤田麗子・訳
2024/5/4 02:01 469文字(平凡社・2750円) ニート生活脱出のために一念発起して始めた翻訳。幸運にも仕事を得たが、あなたにはキャリアがないからと他人名義で出版され、料金交渉をすれば関係を切られる。なんとか仕事の幅を広げようと江國香織や吉本ばななについてレジュメを書き、違う出版社に持ち込んでも「誰それ?」というつれない反
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今週の本棚・情報
ベストセラー
2024/5/4 02:01 147文字<1>白鳥とコウモリ(上)(東野圭吾著・幻冬舎) <2>白鳥とコウモリ(下)(東野圭吾著・幻冬舎) <3>変な家 文庫版(雨穴著・飛鳥新社) <4>三体(2)黒暗森林(上)(劉慈欣、大森望ほか著・早川書房) <5>高校事変(19)(松岡圭祐著・KADOKAWA)(日販・文庫=4月30日調べ)
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今週の本棚・編集後記
「今週の本棚」に新しい執筆者が…
2024/5/4 02:01 163文字「今週の本棚」に新しい執筆者が加わりました。歌人で作家の東直子さん。1996年に「草かんむりの訪問者」で歌壇賞を受賞。歌集や小説のほか、自らイラストも手がけるなど、多方面で活躍されています。世はゴールデンウイークのただ中。東さんが紹介した歌集『草の譜』を、開く機会にしてみてはいかがでしょう。(代)
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今週の本棚・なつかしい一冊
浜崎洋介・選 『車輪の下』=ヘルマン・ヘッセ著、高橋健二・訳
2024/5/4 02:00 1046文字(新潮文庫 440円) 遊び回っていた私が、小学生の時に読み切れた本は、デュマの『巌窟王(がんくつおう)』と夏目漱石の『坊っちゃん』くらいのものだった。しかも、それは自分とは距離のある読書で、向こう側に一人の英雄を眺めるだけのものだった。が、中学のときに手にしたヘルマン・ヘッセの『車輪の下』は違っ
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今週の本棚
東直子・評 『歌集 草の譜』=黒木三千代・著
2024/5/4 02:00 1310文字(砂子屋書房・3300円) ◇世界と私を繋ぐ…濃密な30年の短歌 作者は、第2歌集『クウェート』で「侵攻はレイプに似つつ八月の涸谷(ワジ)越えてきし砂にまみるる」と、湾岸戦争を大胆な比喩(ひゆ)を用いて詠み、強烈な印象を残した。 『草の譜』は、『クウェート』から実に30年ぶりの第3歌集。前衛短歌の
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今週の本棚
持田叙子・評 『サンリオ出版大全 教養・メルヘン・SF文庫』=小平麻衣子、井原あや、尾崎名津子、徳永夏子・編
2024/5/4 02:00 1292文字(慶應義塾大学出版会・3960円) ◇独自の言葉でつむがれた「文学史」 それは小さな赤いいちごから始まった――。 1962、昭和37年。絹織物を商う山梨シルクセンターがいちご模様の小物を発売し、ヒットした。時代は愛らしさを求めていた。社長の辻信太郎はキャラクターグッズの展開に舵(かじ)を切った。
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今週の本棚
内田麻理香・評 『私たちを分断するバイアス マイサイド思考の科学と政治』=キース・E・スタノヴィッチ著…
2024/5/4 02:00 1411文字◆『私たちを分断するバイアス マイサイド思考の科学と政治』=キース・E・スタノヴィッチ著、北村英哉、小林知博、鳥山理恵・訳 (誠信書房・2970円) ◇落とし穴を避けられるか、その一歩 SNSの普及以降、世の中は極論がまかり通り滑稽(こっけい)な陰謀論がはびこるうんざりする状況だ。しかし、うんざり
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今週の本棚
『北斎時代の「絵手本」で「絵皿」を解く 花・七福神の巻』=河村通夫・著
2024/5/4 02:00 464文字(淡交社・2640円) 江戸時代、食事に用いる皿に描かれた絵の由来や物語を親が子に教える「絵解き」という文化があったという。ラジオパーソナリティーをしている著者は、四半世紀にわたり江戸の文字や絵皿を独自に研究しており、その成果をまとめた一冊だ。 収集した約1000枚の絵皿の中から、本書は約160枚
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今週の本棚
『決断の太平洋戦史 「指揮統帥文化」からみた軍人たち』=大木毅・著
2024/5/4 02:00 508文字◆『決断の太平洋戦史 「指揮統帥(とうすい)文化」からみた軍人たち』 (新潮選書・1760円) 『指揮官たちの第二次大戦 素顔の将帥列伝』の続編。戦史を巡るぶ厚い研究書の蓄積と、独特の視座による叙述の切れ味は相変わらずだ。 取り上げるのは日米英の指揮官ら。航空母艦を基幹とする機動部隊を率いた小沢治
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今週の本棚・CoverDesign
鈴木成一・選 『書いたら燃やせ』
2024/5/4 02:00 149文字カバーナシ見返しナシ並製。廉価を極めた体裁だが、中心の黒い矩形(くけい)の所為(せい)で目が惹(ひ)きつけられる。若い世代には不明だろう。昭和の喫茶店にはしばしば灰皿に乗っていた。 ◆ 質問の答えを書き込んでいき、自分の内心が「本」になる『書いたら燃やせ』(海と月社・1320円)より。
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今週の本棚
『ノートル・ダムの残照 哲学者、森有正の思索から』=大森恵子・著
2024/5/4 02:00 491文字(藤原書店・2970円) 哲学者、森有正(1911~76年)に関する書籍はあまたある。その多くが森の著作同様、難解であるのに対し本書はより分かりやすく伝えようと小説の手法をとっている。一人の女性が旅や書簡、対話を通じて「経験思想」「悲しみと慰め」「根源的な孤独」などのキーワードを一つ一つ解き明かし
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「佐藤正午ワールド」全開 7年ぶり新作長編『冬に子供が生まれる』
2024/5/3 05:24 2083文字<金曜カルチャー 西部発 文化&芸能> 『月の満ち欠け』で直木賞を受賞してから7年。佐藤正午さんの待望の新作長編『冬に子供が生まれる』(小学館)が刊行された。デビュー以来、故郷の長崎県佐世保市で執筆活動を続ける作家に会いに行った。 <今年の冬、彼女はおまえの子供を産む> 夏の雨の夜、自宅にいた30
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特集ワイド
絵本を初刊行 N響コンマス・篠崎史紀さん まろさんと奏でる「まほう」
2024/5/2 13:06注目の連載 2983文字「音楽は人類最強のコミュニケーションツール」だと、バイオリニストの篠崎史紀さん(61)は言う。「まろ」の愛称で親しまれ、NHK交響楽団(N響)の顔でもある。ネット交流サービス(SNS)全盛の時代にあって、そう言い切れるのはなぜなのか。不思議な愛称のわけは、初めての絵本に込めた思いは……。気になるあ
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Topics
2024年「マンガ大賞」を受賞 心動かす「普通」の話を 泥ノ田犬彦さん『君と宇宙を歩くために』
2024/5/1 13:07 1388文字書店員らが誰かに薦めたい一冊を選ぶ2024年「マンガ大賞」に決まった泥ノ田犬彦さんの『君と宇宙を歩くために』(講談社)=写真。「普通」ができない2人の高校生の友情を描き、昨年90ページの第1話が公開されると、SNS(ネット交流サービス)で「号泣した」「共感できる」と話題に。読者からの反響に「自分の
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Interview
松浦寿輝さん(詩人・作家) この一冊だけ残れば 全詩集刊行 240編の前衛的試み
2024/5/1 13:07 2204文字詩人・作家の松浦寿輝さん(70)が、3月に『松浦寿輝全詩集』(中央公論新社)=写真=を刊行した。既刊の7冊の詩集に、未刊行の詩集2冊を加えてまとめた全240編、1000ページに及ぶ大著だ。小説も書き、フランス文学研究や評論でも旺盛な執筆活動を展開してきた人だが、「詩はもう書かない」と語る。自らの詩
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Topics
『岸和田だんじり図典』刊行 壮麗精緻、地車の魅力 構造や歴史、豊富な図版で
2024/5/1 13:07 990文字大阪・岸和田型の地車(だんじり)の構造や歴史などを、豊富な図版で説き明かした『岸和田だんじり図典―祭を支える心と技』(だんじり彫刻研究会)が刊行された。民俗学者で篠笛(しのぶえ)奏者の森田玲(あきら)さんが編集・執筆を手掛け、写真家の平田雅路さんが、地車の全容から細部に至るまでを撮影。祭りでの勇壮
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