劇作家の清水邦夫さんが死去 若者の苦悩描く

 若者の苦悩やいら立ちを詩的なせりふで描いて人気を集めた劇作家の清水邦夫(しみず・くにお)さんが15日、老衰のため死去した。84歳。葬儀・告別式は近親者で行う。

 新潟県出身。早稲田大在学中に書いた戯曲「署名人」で注目され、劇作の道へ進んだ。1960年代後半から70年代初めにかけて、東京・新宿の映画館を拠点に演出家蜷川幸雄さんとのコンビで活動。「真情あふるる軽薄さ」「ぼくらが非情の大河をくだる時」など、若者の政治的挫折に伴う心情を描いた作品を発表し、全共闘世代の熱狂的な支持を得た。

 その後、妻で俳優の故松本典子さんらと演劇企画集団「木冬社」を結成、自作を発表して演出も手掛けた。戯曲の代表作に、英国でも現地俳優により上演された「タンゴ・冬の終わりに」のほか、「エレジー」「楽屋」「弟よ」などがある。

 「ぼくらが-」で岸田国士戯曲賞、「弟よ」などで芸術選奨文部大臣賞、「わが魂は輝く水なり」で泉鏡花文学賞。小説も執筆し、芥川賞候補に挙がったこともあった。田原総一朗さんと共同脚本・共同演出、桃井かおりさんら出演の「あらかじめ失われた恋人たちよ」など映画にも関わった。

 平成14年に紫綬褒章を受けた。多摩美術大教授も務めた。

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