「チェルノブイリハート」という映画を見た。
チェルノブイリ原発事故から16年後の2002年に撮られたドキュメンタリー。
この夏日本で公開される動きがあるそうだ。
アイルランドでChernobyl Children’s Project(チェルノブイリの子どもたちプロジェクト)を主宰するAdi Rocheさんを案内役として、チェルノブイリ原発事故により最も深刻な汚染を受けたベラルーシの甲状腺病院、精神病院、孤児院、心臓外科病棟などの子どもたちを映し出す。
タイトルの「チェルノブイリハート」というのは「チェルノブイリの心臓」という意味。チェルノブイリ原発事故後、心臓に欠陥を持つ子どもが多く生まれるようになった。ウクライナでは「チェルノブイリの心臓」と呼ばれた。
とても痛ましく、つらい映像だ。しかし目を背けてはいけないと思う。
これは遠い国のかわいそうな子どもたちの話ではない。このまま何もしなければ、日本で起きてしまうことだ。
考えよう、どんなに小さくても、自分のできること。
字幕がないので、大体の流れが分かるように抄訳をつけます。
【抄訳】
シーン1:テロップ
世界最悪の原子力事故が1986年4月26日に起きた。
ウクライナ北部のチェルノブイリ原子力発電所が爆発を起こし、190トンの放射線ウランと黒鉛が大気中にばらまかれた。
60万人のリクビダートル(事故処理作業者)が徴収され、大量の放射能にさらされた。
事故以来、1万3千人のリクビダートルが亡くなっている。
チェルノブイリの人々は広島原爆の90倍の放射能にさらされた。
40万人以上が避難し、2千以上の村が解体された。
しかしチェルノブイリの被害を最も受けたのは子どもたちだった。
シーン2:チェルノブイリ立入禁止区域
防護服とマスクをつけて、チェルノブイリ原発30km圏内の立入禁止区域へ。
今でも放射線量は非常に高い。アイルランド、ダブリンの通常の環境放射線量の1000倍。
実は事故で大気中に放出された放射能は3%。残りはまだ石棺の中にある。
石棺は劣化が進んでおり、危険性が叫ばれている。
「次なるチェルノブイリはチェルノブイリ自身」と言われている。
(筆者注:しかし次なるチェルノブイリは福島になってしまった)
シーン3:ベラルーシの首都ミンスクの甲状腺病院
甲状腺がんの子どもたち
チェルノブイリ事故後、ゴメリ(ベラルーシの高濃度汚染地域)の甲状腺がんの発生率は事故前に比べて1万倍に増えた。
シーン4:ミンスク郊外にあるベラルーシ最大の精神病院
知的障害や身体障害をもつ子どもたち
チェルノブイリ事故後、先天性出生異常が2.5倍増加した。
シーン5:ミンスクの孤児院
奇形の子どもたち
チェルノブイリ事故前はなかった施設。
シーン6:チェルノブイリから240kmの汚染地域の村
セシウム137で汚染されている。
「放射能は心配だけど、どうしろって言うの?
みんなまだ生きてるわ。
ほら、こんなに長生きしてるじゃない。
死んじゃいないけど、骨が痛いわね。
来てくれてありがとう」
シーン7:体内被曝の測定
チェルノブイリから200kmの汚染地域の村で、ベラルーシ放射線研究所の科学者2名が学童の体内放射性セシウムレベルを測定した。
106名の学童のうち、45名が70以上という危険な体内被曝レベル。
シーン8:精神病院
知的障害や身体障害のある子どもたち。
手足に障害のある男の子
「大きくなったら医者になりたい。子どもを助けたいから」
チェルノブイリから80kmのゴメリは人口70万人。
危険限度とされるレベルの40倍以上のセシウムで汚染されている。
シーン9:ミンスクの孤児院
水頭症の子どもが増えている。
シーン10:ゴメリ市民産科病院
医師によると、健常な赤ちゃんが生まれる率は15〜20%。
免疫系が弱く、生後病気になる子が多い。
ベラルーシの乳児死亡率はヨーロッパ平均の3倍。
シーン11:ゴメリの新生児集中治療室
遺伝子に損傷をもつ子どもたち
シーン12:ゴメリの小児科病院
心臓に疾患をもつ子どもたち
心臓手術を待つ子どもたちは7千人。手術をしなければ死んでしまう。
シーン13:ミンスクの小児科病院
心臓外科病棟
アメリカのボランティア医師チームが重い心臓病(=チェルノブイリハート)を持つ子どもたちの手術を行っている。
チームは13名の子どもの心臓手術を行った。
手術を受けられるのは年300名以下。
手術待ちの子どもの大半は2〜5年以内に亡くなってしまう。
シーン14:テロップ
国連の推計によれば汚染地域で生活している人は600万人。
1986年、チェルノブイリ原発の爆発により、放射能の雲がウクライナ北部、ベラルーシ、ロシアへと運ばれた。
高い放射線レベルがスウェーデン、イギリスのウェールズ、アイルランド、ギリシャ、アラスカでも記録された。
ベラルーシは国土の99%が汚染されている。