2011年6月9日木曜日

チェルノブイリハート


「チェルノブイリハート」という映画を見た。

チェルノブイリ原発事故から16年後の2002年に撮られたドキュメンタリー。

この夏日本で公開される動きがあるそうだ。

アイルランドでChernobyl Children’s Project(チェルノブイリの子どもたちプロジェクト)を主宰するAdi Rocheさんを案内役として、チェルノブイリ原発事故により最も深刻な汚染を受けたベラルーシの甲状腺病院、精神病院、孤児院、心臓外科病棟などの子どもたちを映し出す。

タイトルの「チェルノブイリハート」というのは「チェルノブイリの心臓」という意味。チェルノブイリ原発事故後、心臓に欠陥を持つ子どもが多く生まれるようになった。ウクライナでは「チェルノブイリの心臓」と呼ばれた。

とても痛ましく、つらい映像だ。しかし目を背けてはいけないと思う。

これは遠い国のかわいそうな子どもたちの話ではない。このまま何もしなければ、日本で起きてしまうことだ。

考えよう、どんなに小さくても、自分のできること。


字幕がないので、大体の流れが分かるように抄訳をつけます。


【抄訳】


シーン1:テロップ

世界最悪の原子力事故が1986426日に起きた。

ウクライナ北部のチェルノブイリ原子力発電所が爆発を起こし、190トンの放射線ウランと黒鉛が大気中にばらまかれた。

60万人のリクビダートル(事故処理作業者)が徴収され、大量の放射能にさらされた。

事故以来、13千人のリクビダートルが亡くなっている。

チェルノブイリの人々は広島原爆の90倍の放射能にさらされた。

40万人以上が避難し、2千以上の村が解体された。

しかしチェルノブイリの被害を最も受けたのは子どもたちだった。


シーン2:チェルノブイリ立入禁止区域

防護服とマスクをつけて、チェルノブイリ原発30km圏内の立入禁止区域へ。

今でも放射線量は非常に高い。アイルランド、ダブリンの通常の環境放射線量の1000倍。

実は事故で大気中に放出された放射能は3%。残りはまだ石棺の中にある。

石棺は劣化が進んでおり、危険性が叫ばれている。

「次なるチェルノブイリはチェルノブイリ自身」と言われている。

(筆者注:しかし次なるチェルノブイリは福島になってしまった)


シーン3:ベラルーシの首都ミンスクの甲状腺病院

甲状腺がんの子どもたち

チェルノブイリ事故後、ゴメリ(ベラルーシの高濃度汚染地域)の甲状腺がんの発生率は事故前に比べて1万倍に増えた。


シーン4:ミンスク郊外にあるベラルーシ最大の精神病院

知的障害や身体障害をもつ子どもたち

チェルノブイリ事故後、先天性出生異常が2.5倍増加した。


シーン5:ミンスクの孤児院

奇形の子どもたち

チェルノブイリ事故前はなかった施設。


シーン6:チェルノブイリから240kmの汚染地域の村

セシウム137で汚染されている。

「放射能は心配だけど、どうしろって言うの?

みんなまだ生きてるわ。

ほら、こんなに長生きしてるじゃない。

死んじゃいないけど、骨が痛いわね。

来てくれてありがとう」


シーン7:体内被曝の測定

チェルノブイリから200kmの汚染地域の村で、ベラルーシ放射線研究所の科学者2名が学童の体内放射性セシウムレベルを測定した。

106名の学童のうち、45名が70以上という危険な体内被曝レベル。


シーン8:精神病院

知的障害や身体障害のある子どもたち。

手足に障害のある男の子

「大きくなったら医者になりたい。子どもを助けたいから」


チェルノブイリから80kmのゴメリは人口70万人。

危険限度とされるレベルの40倍以上のセシウムで汚染されている。


シーン9:ミンスクの孤児院

水頭症の子どもが増えている。


シーン10:ゴメリ市民産科病院

医師によると、健常な赤ちゃんが生まれる率は1520%。

免疫系が弱く、生後病気になる子が多い。

ベラルーシの乳児死亡率はヨーロッパ平均の3倍。


シーン11:ゴメリの新生児集中治療室

遺伝子に損傷をもつ子どもたち


シーン12:ゴメリの小児科病院

心臓に疾患をもつ子どもたち

心臓手術を待つ子どもたちは7千人。手術をしなければ死んでしまう。


シーン13:ミンスクの小児科病院

心臓外科病棟

アメリカのボランティア医師チームが重い心臓病(=チェルノブイリハート)を持つ子どもたちの手術を行っている。

チームは13名の子どもの心臓手術を行った。

手術を受けられるのは年300名以下。

手術待ちの子どもの大半は25年以内に亡くなってしまう。


シーン14:テロップ

国連の推計によれば汚染地域で生活している人は600万人。

1986年、チェルノブイリ原発の爆発により、放射能の雲がウクライナ北部、ベラルーシ、ロシアへと運ばれた。

高い放射線レベルがスウェーデン、イギリスのウェールズ、アイルランド、ギリシャ、アラスカでも記録された。

ベラルーシは国土の99%が汚染されている。