アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

イスラエルを「万博」「平和式典」に参加させる日本の人権感覚

2024年05月11日 | 国家と戦争
   

 イスラエル(ネタニヤフ政権)の蛮行が止まりません。

 ハマスは6日、「仲介国エジプトやカタールによる3段階の休戦案の受け入れを表明」(8日付京都新聞=共同)しましたが、イスラエルがこれを拒否しました。ネタニヤフ首相は9日、「あらゆる手段で戦う」と改めて表明しました。

 この間もイスラエルによるガザ攻撃(ジェノサイド)は続けられました。ガザ保健当局によると、攻撃開始からのガザの死者は3万4904人に上っています(9日現在)。

 米バイデン大統領はイスラエルへの武器支援をやめるとイスラエルに圧力をかけていると報じられていますが、「カービー米大統領補佐官は…「イスラエルは自衛に必要な武器の大部分を受け取り続けている」とし、米国の武器の供与は続いていると説明」(10日付京都新聞夕刊=共同)しています。

 アメリカはイスラエルを軍事支援し続けており、イスラエルの蛮行はアメリカの後ろ盾があるから終わらないのです。

 日本はどうか。日本はもちろん軍事支援は出来ません。しかし、別の面でイスラエルを支援し続けています。その端的な表れが、大阪・関西万博へのイスラエルの正式参加を容認したことと、8月6日の広島「平和記念式典」にイスラエルを招待すること決めたことです。

 イスラエルの「万博」参加について、上川陽子外相は4月5日の記者会見で、ロシアとの整合性を問われこう答えました。

「ガザにおけるイスラエルの行動は、ハマス等によるイスラエル領内へのテロ攻撃を直接のきっかけとするものであり、ロシアが一方的にウクライナに侵攻している行動と同列に扱うことは適当ではない」(外務省HP、写真中)

 今回の事態の起点を「2023・10・7」(ハマスによる攻撃)に求めるのは歴史の経過を無視する誤りであることは、多くの識者が指摘しています。日本政府のダブルスタンダードは明らかです。

 「万博」のテーマは「いのち輝く未来社会のデッサン」。ガザの人びと・子どもたちの命を奪って全く意に介さないイスラエルを参加させて「いのち輝く」とは開いた口がふさがりません。

 一方、広島市(松井一実市長=写真右)は4月17日、「招待することで、平和の発信につなげたい」という言い分でイスラエル招待を発表しました(4月17日付朝日新聞デジタル)。ロシアとベラルーシは今年も招待しません。

 広島市の決定について、三牧聖子・同志社大大学院准教授はこう指摘します。

「「いのち輝く」を理念とする大阪・関西万博へのイスラエル参加に続き、なし崩し的な判断を続けていれば、日本が語る「平和」や「非核」の普遍性や、日本の人権感覚は深刻に問われていくことになるだろう。「世界」は決して(イスラエルを支持する)欧米先進国だけで構成されているわけではない」(4月18日付朝日新聞デジタル)

 ジェノサイドを続けるイスラエルに対してどういう姿勢をとるか。それはまさに日本の、日本人の人権感覚の試金石です。
 


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地方自治法改悪と自衛官の“天下り”

2024年05月10日 | 自衛隊・軍隊
   

 地方自治法改悪案の本格審議が9日の衆院総務委員会で始まりました。焦点は、国が自治体に命令することができる「指示権」の創設です。

 その意味について、片山善博・大正大特任教授(元総務相・鳥取県知事)はこう指摘します。

「国はかつて「指揮監督権」を持ち、自治体に「機関委任事務」をやらせることができた。要するに、自治体をアゴで使えた。それはおかしい、というのが00年の地方分権改革でした。国が自治体に指示や命令をするには、個別の法律に基づく根拠が必要だと改めました。国と地方の関係は「対等」になりました。
 改正案では個別の法律に根拠がなくても、国が「非常時」と判断すれば自治体に指示を出せるようになります。国と地方の「対等関係」は根本から崩れ、「上下関係」の時代に逆戻りしてしまう」(4月1日付朝日新聞デジタル)

 加えて強調しなければならないのは、この法改悪は「軍拡(安保)3文書」(2022年12月16日閣議決定)による急速な戦争国家化と一体不可分だということです。政府の念頭にある「非常時」とは「有事」にほかなりません(3月21日のブログ参照)。

 その点で、黙過できない重大な事態が水面下で進行しています。幹部級の自衛官が退職後、「災害担当」などの名目で自治体に再就職する“天下り”が増えているのです。

 7日朝のNHKニュースは、陸上自衛隊1等陸佐が「防災監」として市の職員になり、「災害対応」の指揮を執る訓練を行っている模様を報じました(写真左・中)。
 同ニュースによれば、こうした自衛官の地方自治体への“天下り”は、全国で653人にのぼっています(昨年時点)。

 その顕著な例が表面化したのが沖縄県です。
 
 玉城デニー知事は4月1日、元陸上自衛隊自衛官(1等陸佐)を「危機管理補佐官」に任命しました(写真右)。同ポストは知事部局に新設されたいわば知事直属の補佐官です(4月8日のブログ参照)。

 地方自治法改悪が法的に網をかけて上から地方自治体を支配するものだとすれば、自衛官の“天下り”は有事における自治体の行動、とりわけ自衛隊配備を自治体内部から支配する「トロイの木馬」と言えるでしょう。

 こうした動きが、「土地規制法」による住民運動の監視・弾圧、各地の民間空港・港湾を軍事利用する「特定利用空港・港湾」指定と無関係でないことは言うまでもありません。

 国が戦争を行うためには、地方自治は邪魔なのです。それを取り払って自治体を国の支配下に置く策動がさまざまな方向から強まっている。それが日本の現状です。

 

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「沖縄米軍基地に第三国軍」常態化の根源

2024年05月09日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
  

<オランダ軍 県内で訓練 北部訓練場 米軍の日程に参加>

 4月28日付の沖縄タイムスによれば、「米軍の第4海兵連隊とオランダ軍の海兵隊員が3月10日から2週間、北部訓練場でジャングルリーダーコースに参加したことを第3海兵師団の「X」やフェイスブックなどが紹介」しました(写真右は米軍サイトが載せたオランダ兵=5月4日付琉球新報)。

 日本と地位協定を結んでいない外国の軍隊が日本で訓練を行うのはもちろん認められていません。しかし自民党政権は「訓練」でなく「視察」ならいいという詭弁で容認してきました。

 そこで今回も、「米軍はウェブサイトの説明文のうち「訓練する」の主語に「オランダ海兵隊員」とあったのを削除。オランダ兵参加自体は伏せておらず、訓練目的と取られる表現を避けたかったとみられる」(4日付琉球新報)。見え透いたごまかしです。

 沖縄の米軍基地に「第三国」軍が参加したのは、今回のオランダ軍が初めてではありません。表面化したものだけでも以下の通りです(沖縄タイムス、琉球新報の報道から)。

・1983年 嘉手納基地で、弾薬装着競技会に韓国軍が参加
・2015年 キャンプ・シュワブ、ハンセンで、英国海兵隊将校らが訓練に参加
・2017年 キャンプ・シュワブで、フィリピン海兵隊が訓練に参加

 東京工業大の川名晋史教授はこう指摘します。

「訓練ではなくて部隊訪問や視察なら許容できるとしたとしても、その法的根拠を示すことは難しい。なのに、SNSで堂々と公開していることに驚く。常態化している一端が垣間見えたのではないか」(4月28日付沖縄タイムス)

 防衛ジャーナリストの半田滋氏も、「政府が必要とする手続きを経ることなく不法な段取りで訓練参加した疑いがある。そうだとすれば重大な主権侵害」(4月28日付沖縄タイムスデジタル)だと指摘します。

 米軍の傍若無人ぶりは目に余ります。明らかな主権侵害です。
 問題は、こうした事態が常態化している元凶は何なのか、どうすればこの主権侵害を食い止めることができるかです。

 「訓練」はだめだが「視察」ならいいという詭弁を自民党政権が使い始めたのは、安倍晋三政権からです。上記、2015年の英国兵参加を沖縄タイムスが報じたのが翌16年。追及された安倍政権はつじつま合わせのため答弁書を閣議決定しました(2016年8月8日)。

 その閣議決定は、「在日米軍の施設・区域内における米軍の活動に米国以外の外国の軍隊や軍人が参加すること(は)…いかなる態様であっても日米安保条約上禁じられているというものではない。…個々の事案に即して判断されるべきものと考える」というものです。

 「(第三国軍が)米軍基地に訓練で参加することは、日米安保条約上認められていない」(川名教授、前掲)にもかかわらず、安保条約は必ずしも禁じていない、個々のケースで判断すべきだ、「訓練」でなければいい、としたのが安倍政権の閣議決定です。その「個々の事案」の説明・判断は安保条約(地位協定)上、米軍まかせなのですから、結局、米軍のやりたい放題です。

 問題の根源は明らかです。日米安保条約がある限りこうした主権侵害、米軍の勝手放題はなくなりません。「安保条約違反が常態化している」と嘆くだけでは解決しません。元凶の安保条約を廃棄する以外にないのです。

 安保条約第10条は、「いずれの締約国も、この条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、そのような通告が行われた後一年で終了する」と明記しています。

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CO2をアジアに輸出・「脱炭素」で新植民地主義

2024年05月08日 | 日本の政治・社会・経済と民主主義
  

 3日の岸田首相とブラジル・ルラ大統領の会談では、「日本のハイブリッド技術とブラジルのバイオ燃料を組み合わせて脱炭素への動きをリードする考えで一致」(4日付京都新聞=共同)したと報じられました。

 「脱炭素をリード」といえば聞こえがいいですが、実はたいへんな計画が進行していることに目を向けなければなりません。

企業のCO2輸出計画急増 脱炭素、地中に貯留

 この見出しで京都新聞(4月8日付)に共同通信の独自記事が掲載されました。

「脱炭素対策の一環で日本企業が二酸化炭素(CO2)を東南アジアなどに輸出し地下にためる計画が過去2年ほどで急増し、少なくとも13件に上ることが共同通信のまとめで分かった。…早ければ2030年前後の開始を見込む。…CO2が生じる(大企業の)事業の継続策として海外貯蓄を有力視している実態が浮かんだ」

 同記事によれば、主な二酸化炭素輸出計画の輸出企業と輸出先は次の通り。

▶三菱商事・ENEOS⇒マレーシア   ▶中部電力⇒インドネシア
▶住友商事・JFEスチール⇒オーストラリア   ▶大阪ガス⇒アジア太平洋

 もちろん大手企業が独自に行っていることではなく、政府の政策に基づいて、官民一体で推進されている計画です。

 同記事によれば、CO2を地下に貯蔵する技術はCCSといい、政府はすでに2月に「CCS事業法案」を閣議決定し、今国会に提出して成立を図る構えです。30年度までに事業を開始するとし、官民合わせて少なくとも約4兆円をCCSに投じる計画です(写真右は苫小牧のCCS実証実験センター=4月8日付京都新聞より)。

 日本が出したCO2をアジア諸国に押し付けようとする同計画に対して、当然ながら現地ではすでに反発が出ています。

「環境団体FoEマレーシアは3月、日本政府や三菱商事などへの抗議文を公表し「日本がなすべきことは排出削減であり、他国への輸出や投棄ではない」と批判した」(同記事)

 日本の学者も批判しています。

「東北大の明日香寿川教授(環境エネルギー政策)は「4兆円を再生エネや省エネに投資すれば、早期のCO2大幅削減や化石燃料輸入費の縮減、エネルギー安全保障強化につながる」と指摘。CCSへの支援は国民負担を増やし、脱化石燃料も遅らせると説く」(同記事)

 大企業が利益を上げるためにCO2を出し続け、それをアジア諸国に輸出(投棄)して犠牲を転嫁し、「CO2削減」を装う。政府がそれを国策として巨額の事業費(税金)を投入する。政府はそれで「脱炭素社会をリードする」と豪語する―これはまさに現代の新たな植民地主義と言わねばなりません。いわば環境植民地主義と言うべき暴挙です。

 こうした計画があり、すでに具体的に進行していることを、私はこの記事で初めて知りました。私の不勉強を差し引いても、あまりにも報道が不十分で、知る人は多くはないのではないでしょうか。

 戦時性奴隷(「慰安婦」)や強制連行・労働(「徴用工」)問題はじめ、侵略戦争・植民地支配の加害の歴史に向き合おうとしない日本が、再び新たな植民地主義の暴挙を行なおうとしているのです。絶対に容認できません。



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ラファ攻撃目前!イスラエルの蛮行止められない責任

2024年05月07日 | 国家と戦争
   

 6日午後7時のNHKニュースによれば、イスラエル軍はガザ南部のラファへの攻撃を間もなく開始すると通告しました。「軍事作戦の規模・期間については明らかにしなかった」といいます(写真は同ニュースから)。

 「停戦交渉」中もイスラエルによるガザ攻撃(ジェノサイド)は続けられており、「5日~6日の攻撃で子ども8人を含む22人が死亡した」と伝えられています。

 この事実を目の前にして、刻々と失われていく命を見殺しにしながら、イスラエルの蛮行を止められない。国際社会と、自分の無力さをあらためて思わずにはいられません。

 なぜ止められないのか。それを全面的に解明する力は私にはありませんが、少なくとも言えるのは、NHKはじめ日本のメディアの責任は重大だということです。

 エジプトで続けられていた「停戦交渉」について、メディアは当初、アメリカの言い分そのままに「ハマスが提案を受け入れない」とハマスに責任転嫁しました。イスラエルの強硬姿勢が改めて表面化した後も、「双方の主張が食い違っている」という“どっちもどっち”論です。

 しかし、歴史的経過をみれば、イスラエルとパレスチナの関係において“どっちもどっち”は完全な誤りです。イスラエルのジェノサイドを無条件にやめさせる以外にありません。

 米政府とそれに従属する日本政府の側に立った“どっちもどっち”論がガザの事態に対する認識を誤らせ、イスラエルの蛮行を止める世論の広がりを阻害していることは明らかです。

 さらに重大なのは、メディアの報道感覚(価値観)です。

 NHKに限らず、6日の日本の放送メディアのトップニュースは「連休最終日」のお決まりの「新幹線の別れ」のシーン。そして大谷翔平の一球一打です。冒頭のNHKニュースも、ガザのニュースは何番目かの「その他のニュース」扱いです。

 こうした内向きな、あまりにも内向きな報道が、日本人の視野狭窄と利己主義を助長していることは確かでしょう。こんな報道にどっぷりつかっている(つからされている)日本で、ウクライナに対する抗議の声・デモが起こらないのは当然かもしれません。

 そしてこうしたメディア状況(その背景にあるのは政府によるメディア支配)は、この問題に限らず、あらゆる政治・社会問題で、政府・国家に異議申し立てを行い、権利を主張する思想と行動を日本人から奪っているのではないでしょうか。

 とはいえ、メディアや政府・国家権力の責任だけを指摘してすむ問題ではありません。

 ガザで、世界の紛争・貧困地域で、人々が子どもたちが無惨な死を遂げている実態に目を向けることなく、自分の、家族の「快楽・幸せ」を求めるのは人間性の腐敗であることを自覚し、それに抗うのは、自分の責任です。


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