▲ちょっとしたツーリングから、広大な土地を貸し切ったミーティングまで。その規模や目的は様々だが、車好きは「オフ会」と銘打った“集まり”を開くことが多い。……というのは昔からなのだが、今ドキは文化や方向性に違いが出ているものなのだろうか? とある会に参加して聞いてみた▲ちょっとしたツーリングから、広大な土地を貸し切ったミーティングまで。その規模や目的は様々だが、車好きは「オフ会」と銘打った“集まり”を開くことが多い。……というのは昔からなのだが、今ドキは文化や方向性に違いが出ているものなのだろうか? とある会に参加して聞いてみた

車界隈の「オフ会」事情

「若者の車離れ」がどうのこうのと言われがちな昨今。だがそれでも一部に「車が好きで好きでたまらない」という若者は確実に存在している。

で、なおかつ彼ら・彼女らは「オフ会」と呼ばれる大小の会合をひんぱんに開催している模様。

しかしそこで疑問に思うのは、「ところで今の若者はどんな形でオフ会の告知やら開催やらを行っているのだろうか?」ということだ。

筆者のようなド昭和世代が20代か30代だった頃は、主には「個人サイトの掲示板」でオフ会の告知がなされていた。しかし令和も始まった昨今は、「掲示板」なんてものは完全に時代遅れであるはず。

ならばやはりLINEグループとかなのだろうか……などとおっさんが考えを巡らせてもラチがあかないため、実際の若者にヒアリングしてみることにした。

話を聞かせてくれたのは、都内某所で小さな「オフ会」を行っていた20代の男性6人。全員が平成生まれで、全員が「AMG Cクラス(C63)」のオーナーだ。

▲C63は泣く子も黙る「6L超の自然吸気」モデル。つまり自動車税も強烈だ。この日は、この写真に写る5台と、少し遅れて到着した1台の計6台が集まっていた ▲C63は泣く子も黙る「6L超の自然吸気」モデル。つまり自動車税も強烈だ。この日は、この写真に写る5台と、少し遅れて到着した1台の計6台が集まっていた

――えーと、そもそも皆さんはどのような集団なんですか?
T・Uさん:「集団! その呼称はどうかと思いますが(笑)、まぁ僕とH・Yくんは古くからのリアルな友人で、A・Hくんともけっこう古い仲です」

A・Hさん:「で、そこにいろいろなきっかけでC63 AMGのPP(パフォーマンスパッケージ)に乗ってる同世代が加わってきた……という感じですね」

――その「きっかけ」というのは、やっぱりツイッターとかインスタとかのSNSなんですかね?
T・Uさん:「うーん、そうだとも言えるし、そうではないとも言えるし……」

――どういうことですか?
T・Uさん:「例えば、僕が同じ県内に住んでるらしいH・Yくんの存在を知ったのは、まぁSNSなんですが、とにかく僕は『この人に会ってみたい!』と強烈に思ったんですよ。なので、地元のスタバに来てもらってとりあえず会いました」

――いきなりスタバに呼び出し!
T・Uさん:「はい。で、そこから仲良くなって、一緒に車屋さんを回ったりするようになりましたね」

――……おじさんは、若者って対面コミュニケーションは苦手だとばかり思ってましたが、そうでもないんですね。
U・Sさん:「それは昭和世代の思い込みじゃないですかね? 僕がこの人たちと知り合ったのも、最初のきっかけは首都高の芝浦PAでA・Hくんにいきなり話しかけたことですから」

――そそそ、そうなんですか?
U・Sさん:「はい。といってもA・Hくんのことはその前からインスタで勝手にフォローはしてましたよ。ただ、実際の面識はなかった。で、芝浦PAで『あ、あのインスタの人だ!』と気づいたんですが、そのときA・HくんはすぐにPAから出て行っちゃいそうな気配でした。なので、思いきって話しかけたんですよ。ですから、付き合うようになったきっかけはSNSだとも言えるし、そうではないとも言えますし」

Photo:稲葉真

――なるほどぉ……。他の方々にお聞きしても、「SNSは確かに重要な役割を果たしているけれど、決してそれだけではない」というニュアンスのようですね。
I・Kさん:「僕もそうですよ。同じC63 PPのオーナーとして前からSNSのアカウントをフォローしていた人を首都高の芝浦PAとか辰巳PAでたまたま見かけて、思いきって話しかけてみる。で、そこからリアルでもつながりはじめるという」

――なるほど。そしてその後はツイッターとかで連絡を取り合って、『いついつの何時に辰巳PAに集まろうぜ!』みたいに決めるわけですね?
一同:「うーん……それもちょっと違うかなあ」

――そそそ、そうなんですか?
N・Hさん:「みんなのSNSは見てますけど、SNS上で『会おうよ』とは言わないし、いちいち日時も決めませんね」

H・Yさん:「ですね。わざわざ会うというよりは『そこに行くと誰かいる』みたいな感じでしょうか。で、その『誰か』とはSNSであらかじめつながってるから、なんとなくの人柄もわかってるし、会えば楽しいし話も合うし、みたいな」

――なるほどぉ……。最近はそういったニュアンスのつながり方というか、いわゆるオフ会の発生の仕方がメジャーだと考えていいんですかね?
一同:「ですね。これがフツーだと思います」

変わっているようで、変わっていない?

平成生まれの皆さんと話してみて思ったのは、「昭和の頃と比べて、細かい点や具体的なオペレーションはもちろん大きく変わったけれど、根本的なところはそんなに大きく変わってないのかな」ということだった。

つまり、なんだかんだ言っていつの時代も「車好きな男」というのは必ずいる。

例えば文中にご登場いただいたT・Uさんは高校生時代、「無機質の可能性」と題したC63に関する1万6000字の論文を自主的に、勝手に執筆したそうだ。

当時はC63を運転したことすらなかったのに、「ロクサン愛があふれすぎてしまい(T・Uさん談)」思わず2万字レベルの“研究論文”を書いてしまったのだ。

とはいえ、いわゆる「若者の車離れ」が進んでいるのは事実のようで、当日の参加者は口を揃えて「身近な範囲だけで言うなら、車好きの男子なんていませんね。僕ぐらいですよ(笑)」と言う。

それはそれで寂しい話なのかもしれない。

だが今の時代は、筆者が彼らぐらいの年齢だった30年前と違い「SNS」という非常に便利な道具がある。

それを上手に活用すれば、遠く離れた場所で生きている見知らぬ「同好の士」を即座に見つけることができ、そしてユルく深く広く、瞬時につながることができる。

……それってぜんぜん悪くない話じゃないか。むしろ、昭和の時代よりステキな状況かもしれないじゃないか――と、ロクサン談義に花を咲かせる平成生まれのスリムな諸君を見ながら、昭和生まれの軽くメタボなおじさんは思うのだった。

▲今も昔も、車好きが集まるとこの体勢(?)になって話が始まるようだ。素晴らしいぞ、平成生まれの車好き諸君! ▲今も昔も、車好きが集まるとこの体勢(?)になって話が始まるようだ。素晴らしいぞ、平成生まれの車好き諸君!
文/伊達軍曹、写真/稲葉真

伊達軍曹(だてぐんそう)

自動車ライター/輸入中古車 評論家

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。