【図説で愛でる劇中車 第11回】無茶な設定も愛せる!? 「昭和の東映特撮」に出てくる劇中車
2020/02/29
国内外問わず様々な映像作品(アニメも含め!?)に登場したあんな車やこんな車を、イラストレーター遠藤イヅルが愛情たっぷりに図説する不定期連載!
第11回は、劇中車の魅力の一翼を担う、特撮番組から取り上げましょう。中でも今回は昭和40~50年代に人気を博した、東映が製作した4つの特撮から、ヒーローが乗る特徴的な万能スーパーマシン4台をピックアップしました。原子力エンジンだったり、最高時速500kmだったり、変形してマッハ3で空を飛んだりするという無茶な設定ばかりですが、細かいことは気にしちゃダメ!?
「快傑ズバット」と「ロボット刑事」
なんでも世界一!キザでいなせなヒーロー「快傑ズバット」の「ズバッカー」
親友の科学者、飛鳥五郎を殺された復讐を誓い、革ジャンに赤いシャツ、白いギターといういでたちで敵の足取りを追う早川健。彼が特殊スーツを着て変身し、街に巣食う悪を退治してゆく痛快な番組が「快傑ズバット」(昭和52年)です。
キザだけど粋で男らしい早川健が、敵の用心棒と「物理法則を一切無視」した戦いを繰り広げるなど、このコーナーのわずか数行では語りつくせぬほどに濃厚で、ツッコミどころ満載の面白い作品です。
ズバットが乗る「ズバッカー」は、特殊スーツと同じく、飛鳥五郎が遺した設計図を用い、早川健が作り上げた万能車。原子力を動力に、地上での最高時速350km/h、変形して空も飛ぶスーパーマシンです。科学者でもない早川健がどうやって作ることができたのを聞くのは、ヤボってもんです(笑)。製作のベースは、ダットサン(日産) フェアレディ(SP)でした。
今見てもグッドデザイン「ロボット刑事」の「ジョーカー」は空飛ぶパトカー
頑固なベテラン刑事・芝と、若い相棒・新條は、人間の仕業とは思えない怪事件の捜査にあたっていた。そのとき警視庁に突如配属されたロボット刑事が「K」。事件の背後には、犯罪用ロボットをレンタルして利益をあげる「バドー犯罪シンジケート」の存在があった。科学捜査を嫌う芝は、当初Kを嫌っていたが、Kの優しさと真摯な姿勢に、やがて信頼関係を築いていく……というストーリーの「ロボット刑事」(昭和48年)。豊かな感情を持ち、ポエムまで書いてしまうKの人間くささも魅力的でした。
そんなKの愛車が、「ジョーカー」です。ベースは、トヨタ スポーツ800。跳ね上げ式ドア、とがったノーズに「ブレッドパン」型ボディなど、今見てもなかなかのグッドデザインです。刑事が乗る車なので、ジョーカーはパトカーとしても活躍。捜査用のいろいろな機器が積まれ、飛行することも可能でした。なお、「ジョーカー」という車名は、番組が当初「ロボット刑事J(ジョー)」だった名残です。
「イナズマン」と「バロム・1」
大きな口がカワイイ!? 「イナズマン」の「ライジンゴー」
超能力者=ミュータントを「新人類」として、帝王バンバが築いた「新人類帝国」。それに立ち向かう正義の超能力者集団「少年同盟」と、同じく超能力を持つ渡五郎=イナズマンの戦いを描いた「イナズマン」(昭和48年)。主人公がイナズマンに変身する際、いったん「サナギマン」を経るという「2段変身」が斬新でしたが、サナギマン時には敵の攻撃を受けるのみ。ナレーターも「サナギマンは待つ。イナズマンに成長する時を、ただひたすらに待ち続けるのだ」という合いの手が入っていましたっけ。
イナズマンの愛車は、「ライジンゴー(ライジン号とも)」です。思い切り口と目がついていて、なんかカワイイ(笑)。こちらも変形して空をマッハ3(そんな無茶な!)で飛ぶことができるのですが、変形もかなり無理がありました。(変形後の姿はぜひ映像をご覧ください)。でもそれでいいのです! ベースは、いすゞ ベレットGTでした。
「バロム・1」の「マッハロッド」は長い排気管が迫力満点!?
昭和特撮はいろいろ無茶な設定やストーリー上にツッコミを入れる余地が多いのですが、「超人バロム・1」(昭和47年)もなかなかの逸材です。水木一郎氏が「ブロロロロロー!」「ズババババーン!」と絶叫するオープニング、何千年もの間「ドルゲ」という悪と戦っていたのに、その役目を子供2人に託しいきなり1話で自爆するコプー、人体のパーツをモチーフにしたグロテスクなドルゲの怪人たちなど、お伝えしたいことがいっぱい(笑)。伝説の特撮番組として知られており、「ゴルゴ13」のさいとう・たかを氏が原作というのもシビれます。
バロム・1が乗る万能車は、「マッハロッド」。飛び出たエンジンから伸びる謎の排気管、特撮マシンには必須? の大型ファンが特徴です。ベースはこちらもダットサン(日産)フェアレディ。番組後半からは初代サニートラックベースの俗称「Bタイプ」に入れ替わります。最高時速はマッハ2……とあり、もはやどうツッこんでいいかもわかりません(笑)。オープニングとエンディングでは主人公をさしおいてやたらに登場するのも面白いです。
特撮ヒーローには、万能スーパーマシンが必須!
いろいろとツッコミを入れてしまいましたが、それも筆者の昭和特撮ヒーローへの愛ゆえ。特撮ヒーローには、どんなときでもヒーローのもとに駆けつけ、時には救う万能スーパーマシンが必要なのです。
今回は昭和40~50年代の特撮4作品から4台をお送りしました。特撮ヒーローはまだたくさんいて、もちろん彼らが乗る万能車もまだまだあります。次回の「劇中車特撮セット」をお楽しみに!
イラストレーター/ライター
遠藤イヅル
1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はプジョー 309とサーブ 900。
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