全1657文字

 東芝デジタルエンジニアリングは生成AI(人工知能)を活用したリバースエンジニアリングサービスの提供を開始した。プログラムコードや運用手順書をAIに学習させ、エンジニアが問い合わせと検証を繰り返すことで設計書に落とし込む。エンジニアの補助役として生成AIを活用することで、生産性向上に役立てる。2024年4月1日に発表した。

 対応言語はPL/SQL・Python・JavaScript・HTML・VBAなど。他の言語でも、その言語に詳しいエンジニアが東芝デジタルエンジニアリング内で手当てできれば対応可能とする。料金は個別見積もりだ。

 サービス利用の流れは次の通り。まず、東芝デジタルエンジニアリングのシステムエンジニアが顧客のドキュメントやコードを確認するなどして、サービスの適用可否を判断する。適用可と判断した場合、生成AIがプログラムコードや運用手順書を解析する。生成AIの基盤は米Microsoft(マイクロソフト)の「Azure OpenAI Service」を利用する。

 次にエンジニアがAIに対して「このコードの処理を表すフローチャートを起こして」「リレーション設計を教えて」といった問い合わせをする。生成AIが虚偽の回答を返す「ハルシネーション」を起こす恐れなどを考慮し、回答はエンジニアがコードと突き合わせるなどして検証する。コードの書き方の癖などを学習させ、エンジニアがチューニングしていくことで精度を高めながら設計書を作成できるとする。

リバースエンジニアリングサービス利用の流れ
リバースエンジニアリングサービス利用の流れ
(出所:東芝デジタルエンジニアリングの資料を基に日経クロステック作成)
[画像のクリックで拡大表示]

リバースエンジニアリングには大量の人員が必要だった

 東芝デジタルエンジニアリングでは、顧客から「システムの運用保守担当者が退職してしまい、勝手が分からない」「古いシステムをリプレースしようにも、設計書が最新化されていない」といった相談を受けていた。

 こうした課題の解決のため、同社ではリバースエンジニアリングサービス自体はこれまでも手掛けてきた。しかし、従来のリバースエンジニアリングではエンジニアを大量に張り付ける必要があり、時間とコストがかかっていた。そこで生成AIを活用し、エンジニアの補助役とすることで生産性を高めようとしている。

 生成AIを適用した成果は上がっている。同社はある顧客向けに、PL/SQLとVBAで組まれた合計20万ステップほどのプログラムのリバースエンジニアリングを実施した。PL/SQLで書かれていた業務ロジックを解析し、設計書を生成。担当したエンジニアは2人で、作業に要したのは3カ月ほどだったという。

 東芝デジタルエンジニアリングの野瀬克紀営業統括部マーケティング担当部長は、従来の人手によるリバースエンジニアリングを実施していれば「半年ほどかかっていたのではないか」と見る。生産性を2倍近くに改善できた格好だ。