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 毎年4月に新入社員研修を担当している筆者は、「報連相」という言葉を連呼しています。報連相とは、「報告、連絡、相談」の略です。

 教科書通りの教え方だと、報連相とは「仕事の進捗を報告する、何かあれば連絡する、困ったことは相談する」ということになります。しかしこれをそのまま伝えても、なかなか適切に報連相ができるようにはなりません。

 まず、新入社員は「報告」と「連絡」の違いに悩みます。実際はこれらを区別することにあまり意味はないのですが、「報告、連絡、相談」と教えられるとその違いを気にしてしまうのです。これらと比較すると、相談は理解しやすいようです。

 筆者が講師を務める新入社員研修でも報連相の練習をしますが、身に付けてもらうのは容易ではありません。演習で実際にやってみたとしても、PREP法など伝え方の基本を理解していない状態ではただのゲームになってしまいます。逆にPREPを意識しすぎて、話す内容を忘れてしまうケースもあります。

 大きな声で報連相をするように、と指導している会社もあります。ただ、もともと声が小さい人に対して大きな声を出せ、これまで話したことのないような内容を分かりやすく報告しろ、と教えても、うまくいきません。教わる方からすれば、情報量も自分が直すべきことも多すぎて、訳が分からないまま新人研修が終わってしまうでしょう。

 筆者は、業務に支障が出るほど声が小さい人に対しては、まず声の大きさだけに集中して練習してもらいます。ただし声帯や声の大きさは人によって異なるので、それを変えることは時間がかかります。さらに新型コロナウイルス禍以降、マスク着用が常態化し、それなりに大きな声を出しても聞こえにくい、口の動きが見えないので誰が話しているか分からない、といった状態になっています。

 ですから、声が小さければ近づいて話す、話すことが苦手ならメモを用意してそれを見せながら話す、などのアドバイスをするようにしています。こうしたことを通じて、報連相に対する苦手意識を解消していきます。

問題は「報連相の内容」ではない

 このように新人研修で指導しても、現場配属後に「今年の新入社員は報連相ができない」と言われることはあります。その理由を調べてみると、必ずしも報連相の内容が問題になっているわけではないことが分かります。