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2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は、「未来社会の実験場」をコンセプトに掲げる。開幕に向けて、建設会社は施設の工事などにロボットを投入。現場の未来像を体現しようとしている。その最前線に迫る。

 全長約3.7m、高さ約1.2mのヘリコプター型ドローンが約20kgの資機材を積んで大阪・咲洲(さきしま)から離陸。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場となる夢洲(ゆめしま)へ、4.5kmほどの距離を約10分で飛んだ──。

 竹中工務店とアクティオ(東京・中央)は、建設工事の資機材搬送でドローンを活用するため、大阪ベイエリアで検証を重ねている。23年11月の実験では、「レベル2飛行」で安全に運行できることを確認した。レベル2では、補助者が目視できる範囲内での自動飛行が可能だ。飛行ルートのおおよそ中間地点である夢洲南東部に補助者を配した〔写真12図1〕。

〔写真1〕ドローンで資機材を搬送
〔写真1〕ドローンで資機材を搬送
ヘリコプター型ドローンで咲洲から夢洲に資機材を運ぶ。竹中工務店とアクティオが2023年11月に実証実験を行った(写真:竹中工務店)
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〔写真2〕離陸直後は手動で操作
〔写真2〕離陸直後は手動で操作
2023年11月に実施した実証実験の様子。離陸から上空約30mに到達するまでは手動で運転した。ドローンは上空約60mを飛んで移動する(写真:竹中工務店)
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〔図1〕咲洲・夢洲間を10分で飛行
〔図1〕咲洲・夢洲間を10分で飛行
2023年11月の実証実験は「レベル2飛行」で実施。目視での飛行確認が必要なため、補助者を配置した。実際の運用で想定している新ルートは「レベル3飛行」を想定している。レベル3は目視による確認が不要だ(出所:竹中工務店の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 搬送したのはインバーターやコンクリートを締め固めるために用いるバイブレーター、排水作業などで使うサニーホースなどだ〔写真3〕。

〔写真3〕最大積載重量は23kg
〔写真3〕最大積載重量は23kg
「緊急で必要なちょっとしたもの」を運ぶ。2023年11月の実証実験で使用したドローンの最大積載重量は23kg。左の写真はコンクリートを締め固めるのに使うバイブレーター、右の写真はインバーターだ。運ぶものの大きさや形状に応じて、ボックス型のケースや食品トレーのような入れ物を使い分ける(写真:竹中工務店)
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 「バイブレーターが故障したので代わりが欲しい、ゲリラ豪雨に見舞われそうなので排水作業に備えたいなど、ちょっとしたものを緊急で届けてほしいという現場の要望は非常に多い。それらに応えたい」。竹中工務店西日本機材センター開発グループの永田幸平氏はこう話す。特に周囲を海に囲まれた夢洲へのアクセスは限られており、緊急で資機材を運ぶ手段の構築は大きな意味を持つ。