新型肺炎、武漢在留邦人のチャーター機が到着

武漢から到着するチャーター機を出迎えるために、羽田空港内に入る数十台の救急車=29日午前、東京・羽田空港(桐原正道撮影)

 新型コロナウイルスによる肺炎が発生・蔓延(まんえん)し、居住者らの移動が事実上制限されている中国湖北省に在留する邦人を帰国させるための日本政府の全日空チャーター機の退避第1陣が29日午前8時40分ごろ、羽田空港に到着した。日本政府が感染症の蔓延を受けチャーター機を派遣したのは初めてとみられる。

 チャーター機には、湖北省に在留する206人が搭乗した。医師1人と看護師2人を含む厚生労働省の医療チームも同乗し、全員に問診や検温といった簡易の検疫を実施。外務省によると、搭乗前の検査では、新型肺炎の発症者はいないという。事前説明では発熱や咳(せき)などが確認された乗客は座席を分けるなどの措置を取るとしていた。

 到着後は、症状のある人は東京都の感染症指定医療機関に搬送。症状が確認されない乗客も国立国際医療研究センターに搬送し健康状態を調べるという。陰性の場合でも、帰国後2週間は外出を控えてもらうように依頼するとしている。

 中国当局は23日未明、特段の事情がなければ市民らは湖北省の武漢から離れてはいけないなどとし、鉄道の駅や空港を閉鎖。移動の制限に乗り出していた。現地ではマスクが入手しづらく、食料も高騰。病院は発症者であふれ、衛生状態の悪化も懸念されていた。

 このため、日本政府は26日、希望者全員をチャーター機で帰国させる方針を決定。中国政府と調整し、28日夜に武漢に1機を派遣した。マスク約1万5千枚や防護眼鏡8千個、手袋などの支援物資も中国側に届けたという。

 日本政府の集計では、約650人が帰国を希望。第1便には、感染源とされる武漢の海鮮市場周辺や空港周辺に滞在している邦人らが優先された。公共交通は遮断されているため、空港までの移動には、各企業の車両などが使われた。日本時間29日午前6時前、武漢の空港を出発した。

 残る邦人の希望者の帰国も急ぐ方針で、政府関係者によると、退避第2陣は29日午後8時ごろ、日本から派遣する方向で調整しているという。

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